東京の、ある会社で。
横井と武川は、同じ水処理メーカーに勤めていました。ただ社内では接点がなく、横井が退職後に共通の友人を通じて知り合いました。横井は工事部で、各地のプラント建設の現場に立ち、装置を組み上げる仕事を。武川は研究開発部門で、排水処理に関わる微生物の研究を続けていました。
やりがいはありました。けれど、日々は何かに追われるように忙しく、大きな組織のなかで自分の手触りが少しずつ薄れていく感覚もありました。これからの時代は、もっと一人ひとりの個の力が問われていく。そして、地域こそが、創造性が育まれる場として、ふたたび重要な役割を果たすはずだ。— そんなことを話し合うようになりました。
平林という土地に出会って。
山梨県富士川町・平林。標高七百五十メートルの里山に広がる、江戸時代から続く三百枚の棚田。「関東の富士見百景」にも選ばれた、棚田越しに富士山を望む集落です。
ここで暮らしてきた人たちが、何世代にもわたって守ってきた風景。その中に身を置いて、自分たちもこの土地の物語の続きを書いてみたい。出会ってしまった、というのが正直なところです。
元セーター工房を、二年半かけて。
かつてこの集落でセーターを編んでいた、小さな工房。それを譲り受け、二年半かけて、自分たちの手で改修しました。建設現場で装置を組み上げてきた経験が、そのまま壁や床や窓に活きました。建築廃材も活かして、店舗を組み上げていきました。
こうして 2024年8月、チーズ工房カフェ「molq CHEESE MOLDING FAQTORY」が生まれました。
自分たちの人生を、面白くする。
私たちはまず、自分たちの人生を自分たちで面白くしていくために、TBDEをつくりました。そしてその面白さが、関わってくれる人や、この地域に少しずつ広がっていけばいい、と思っています。
チーズも、宿も、建築も、AI も DX も、すべてはその実践です。